“蒼き瞳に気まぐれて”
   −メルダ・ディッツのSt. Valentine's day−   〜プレゼント“紅の箱”の行く手に待つものは…♪〜

2013/01/30   Sドクターさま

注意!!

このお話は、H25年現在映画上映中の
『ヤマト2199』に登場するキャラクター

活躍いたします。

ヤマト2199をご覧になっていない方には、
ネタバレとなる部分もあります。
ご了承いただけるかたのみ、ご覧ください。

〜管理人・瑞喜

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 西暦2199年2月初旬、地球を離れることすでに4カ月が経過し、
宇宙の灯台“バラン星”を後にしたヤマトは
ドメル艦隊との最終決戦を迎えるべく、
古代艦長代理を中心にこれまでの
ガミラスとの交戦によって得られた情報を基に、
ドメル戦の戦略を練っていた…

この物語は、
その様な戦火の中ほんの一時
初めて宇宙に飛び立った若きクルースタッフの
束の間の楽しみにスポットを当てて書いたものです。

…そう、地球で2月と言えば
St. Valentine’s day…
 女の子にとっては“決戦の日”なわけですね!

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 ここ2199ヤマトの中でも、ヤマトガールズと称される森 ユキをはじめとする 女子1人1人がそれぞれの思惑の下にすでに水面下で活動を開始していた…

コスモゼロでの偵察ミッションからヤマトに帰還してからというものの古代とユキ…  2人の仲は急速に進展し、2人の姿がプライベートタイムに後方展望デッキに見られることが多くなっていた。

その一方で、山本 玲(レイ)と古代一尉との間の時間の共有は次第に薄れ、レイは日々物足らなさを感じるようになっていた。

気晴らしにとレイが向かった先は、元上長の平田一主計長のもとだった…
レイの浮かない顔を見てとると、自慢のレモンティーを淹れて平田はレイに言った。

平田:「どうした、山本… 浮かない顔をして。」

平田に質問され、ちょっと下向き加減にレイが、

山本:「ええ、ちょっと…」

と答えると、平田がレイの顔を覗き込んで、

平田:「レイ、お前古代のことが好きだろ…!?」

と、レイに質問した。

てっきりレイが真っ赤になって否定するものと踏んでいた平田は、レイが真っすぐに自分の瞳を見つめて、

山本:「はい、好きです… わたし、古代一尉のことが大好きです。」

と、答えたのに対して、“これは、重症だ…”と思いながらも、かつての主計科の後輩に、

平田:「そんな暗い表情、お前には似合わないだろ…」

と言って、

平田:「どうだ、そろそろSt. Valentine’s dayだ… ダメもとで、古代のヤツに手作りチョコレートを作ってみるか…?」

と尋ねた。

次の瞬間、レイの表情がパッと輝いて、

山本:「はい、チーフ… お願いです、作り方教えて下さい。」

と申し出た。

“レイは戦闘機パイロットだ… 躊躇しているなんてのは似合わない…”

そんなことを平田は考え、手作りチョコレート−平田レシピスペシャルをホワイトボードに書き連ねた…

ひと通り書き連ねると、キッチンにともに入り、レイに横にスタンバイするよう指示して、

チョコの刻み方… 均等に刻むのがコツ
乾いたまな板の上でレイに見えるように、細かくサイズを揃えながらカットし始めた。

平田:「いいかレイ… サイズが揃っていないと次の湯せんの際に、均等に溶けずにダマになったり、火が通るまでに時間がかかってチョコレートの風味がとんでしまうんだ…わかるか?」

すると、レイが平田に、

山本:「チーフ… “ダマ”ってなんですか…?」

と質問してきた。

平田はレイに、

平田:「山本、お前料理したことあるんだろうな…?」

と聞いて、レイが、

山本:「兄さんに1度作ったのがあるぐらいです…」

とボソッと返答した。

平田が、レイに、

平田:「ダマって言うのは、“溶けずに残った塊”のことだ。」

と説明し、レイにナイフを渡した。

するとレイは、巧みに包丁を使用して寸分のくるいもなくチョコレートをカットしていった…

それを見て平田が、

平田:「レイ、センスいいな…♪」

と褒めると、レイがニコッと笑った。

湯せん、チョコホイップ、ガナッシュ、コーティング、テンパリング、デコレーションの全ての過程を終了した時にはすでに3時間が経過していた…

いつになく真剣なレイの横顔を見ながら、

平田:「(コイツの真剣な料理姿初めて見たな… 修行すれば一流のコックになるに違いない… 惜しいな。)」

と思いつつ、レイの作ったチョコを1つつまんで口に頬張ると、

平田:「うん、美味い… いい味だ、レイ。」

と、レイのチョコレートを褒めた。

レイがニコッと笑いながら、ラッピングの作業をし終えると、

平田:「誰に渡しても、恥ずかしくないチョコレートだぞ。」
「もし、古代のヤツが受け取らないと言ったら、俺のところに持ってこい。」
「その時は、俺が貰ってやるから…」

と、レイの努力に対してレイ自身を気遣ってくれた…

平田のそんな優しさが嬉しくて、

山本:「チーフ… ありがとうございました。」
「おかげで勇気づけられました。」

山本:「今度他の料理も教えて下さいネ…」

と言って、丁寧に右手で、ピッと短く敬礼すると平田のもとを離れて自室に戻って行った…

すると入れ替わりに、岬 百合亜と原田 真琴の2人が平田のもとを訪れた…

百合亜がいましがた、レイの作ったチョコレートの欠片をつまんで口に放り込むと、

岬:「わ〜、このチョコレート… すごく美味しい。」
「誰が、作ったのかしら…?」

と声を発した。

すると真琴が、百合亜に向かって、

原田:「百合亜、平田チーフに決まってるでしょ!」

とウィンクしながら2人でキッチンに入って行った…
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 ヤマトの艦内時計が2220年2月13日 23:30の時を刻んだ…

ヤマト第一艦橋には、その時古代艦長代理、航海長の島 大介、南部砲雷長、森 ユキ船務長、相原通信長、太田気象長、新見情報長、山本レイ、岬百合亜の面々が集っていた…

相原義一通信士が突如古代 進に向かって、

相原:「古代戦術長…、大ガミラス帝星銀河方面軍第707航空団所属メルダ・ディッツ少尉から秘匿通信で入電しています…」

相原:「どうします… メッセージを聞かれますか?」

艦橋内の空気が相原のその一言で一変した…

コスモレーダーを注視していた船務長のユキが突然に、相原に向かって、

森:「どんな内容なの… 相原君!?」

と質問すると、相原が、

相原:「秘匿通信ですので、それは船務長にもお伝えできません…」

と答えると、ユキがムッとした。

相原が続けて、

相原:「しかもこのメッセージは、1度しか再生されません… 古代一尉の音声認識後に再生されるようプログラムされています。」

相原の説明を聞いて、戦術長席に座っていた古代が相原のもとに歩み寄って、

古代:「わかった、俺が出よう!」

と言って、相原から通信傍受用のヘッドホンを受けとった。

音声認識ボタンをプレスすると、古代が、

古代:「ヤマト戦術長の古代だ…」

と声を発した… しばらくすると、音声認識が正しくなされた表示がされ、

古代の耳に聞きなれたメルダのヴォイストークが流れ出した…
 こちらメルダ・ディッツ…
古代、久しぶり。

願わくは、あなたとは戦いたくなかった…
だが、わたしは軍人…

軍人としての誇りをかけて、ドメル艦隊のもと、あなた(あなたのヤマト)と戦うことを決意した。

地球の古からの慣習では、明日“2月14日”は特別な意味があるらしい…

3日後に迫った開戦前に、あなたに渡しておきたいものがある…

地球時間、明朝6時ジャスト、ヤマト予定航路上の宇宙座標(X・Y・Z)のポイントで、“紅の箱”を受け取って欲しい…

頼んだわ…

あの日、あなたに「君とは信じあえる気がする…」と言ってもらえたことが、とても嬉しかった…♪

では3日後、互いの正義のために相いまみえんことを…

ヤマト戦術長 古代 進殿
メルダのメッセージを聞き終えると、古代は自分の席に戻り航海長の島に、

古代:「島、明朝6時ジャスト… ヤマトは宇宙座標(X・Y・Z)のポイントを通過する予定か?」

と聞いた。

島が古代に、

島:「ああ、古代… 航海班の立てたスケジュールだと確かに、その時刻にその宙域を通過する。」

島:「だがどうして、古代… 君がそのことを知っているんだ…?」

その質問に古代は答えずに、

古代:「島…、悪いがその時間そのポイントでヤマトを5分ほど停止してくれないか?」

島が驚いて古代に、

島:「どういうことだ、古代…」

島:「今のメルダからの通信と関係があるのか…?」

と聞き返した…

古代が島に、

古代:
「メルダから俺あてに渡し物があると言われた…」

その時ユキが古代と島の会話に割って入って、

森:「島君! 停止せずに通過して…!」

と悲痛な叫びをあげた。

驚いた島が、

島:「どうしたんだ… 森君?」

と尋ねると、

ユキが迷わずに答えた。

森:「女の直感よ!」

島:「 … … 」

島がユキに、

島:「個人的には停止は避けたいところだが、艦長代理の命令を理由なく断ることはできない…」

島が、

島:「停止するよ…」

とユキに告げると、

森:「無茶な命令に従う必要はないわ… それに、受け取る必要のあるものではないわ…」

雲行きが怪しくなってきたのをクルースタッフの誰もが感じていた…

重い空気の閉塞感をいち早く察知した島が、ユキに尋ねた。

島:「船務長…、君はその渡し物が何なのかを知っているのか…?」

ユキは首を縦に振って、島に答えた。

その時ユキが手にしたものは、自らユキがコスモレーダーのホールディングスペースの奥から取り出した… 綺麗にラッピング処理がされた古代へのプレゼントだった…

ユキが島に、

森:「メルダが古代君に渡そうとしているものはこれと同じもののはずよ…」

と告げた。

島がユキの瞳を見つめて、

島:「まさか…、バレンタインチョコレート?」

島がそう言った時、ヤマト艦内時計が2月14日00:00を指し、岬百合亜のYRAラジオヤマトがスタートした…(すでに、百合亜は艦橋を後にしていた…)

いつもながらに元気のよい百合亜の声に、クルースタッフの場の雰囲気が和むのを感じたユキはここぞとばかりに、古代に向かって歩み寄ると、

古代の前に立って、進の瞳を見つめながら、

森:「古代君… わたしの気持ちです… 受け取って!」

と言って、古代に手作りのチョコレートの入ったプレゼントを手渡した…

古代の頬に赤みが差すのをレイは見逃さなかった…

岬:「は〜い、皆さん… 2月14日00:00を回りました!」

岬:「バレンタインデーの1日が始まりました〜♪」

岬:「アナライザー… これ、私からのプレゼント♪」

と言って、百合亜がアナライザー09に手作りのチョコレートをプレゼントした…

第一艦橋において刻一刻とメルダの指示した時刻が近づきつつあった…

古代はユキからの申し出を断り切れずにどうしたものかと悩んでいたが、その様子を島がおかしげに見つめながら、時折古代に視線を投げかけてくる…

島:「おい、古代… 本当に停止しなくていいんだな?!」

と。

時刻が05:58を回った時に突然ヤマトの左舷カタパルトからコスモゼロα−02の機体が発進していくのをユキがコスモレーダー上で視認した。

森:「ヤマト左舷カタパルトより、コスモゼロα−02と思しき機影が発艦しました!」

艦橋内が騒然として、

古代がそれを機に島に、

古代:「島、艦を緊急停止!」

と告げると、

島が、

島:「了解。 ヤマト緊急停止!」

と言って、艦を停止させた。

レイはそれを確認すると宇宙座標(X・Y・Z)のポイントに目がけてまっしぐらに向かって行った…

レイがその場に到着する寸前のところで、ヤマトの艦内時計が06:00丁度を指し、その瞬間レイの前方に突如として“紅の箱”が出現した…


真田副長がその瞬間を目の当たりにして…

真田:「瞬間物質移送器…か?」

と囁いた。

レイがメルダのプレゼントを回収し、ヤマトに帰還すると古代が慌てて格納庫に駆け寄ってきた…

コスモゼロα−02から降り立ったレイに、古代が、

古代:「何て無茶なことをするんだ、山本!」

と叫んだが、レイはそれに答えず、コスモゼロα−02のシートから2つの“紅の箱”を取り出し、古代に手渡した。

山本:「右が、メルダからのプレゼント…」
「そして、左がわたしからのプレゼントです…」

山本:「わたし、古代一尉が好きです…」

そう言って、レイは古代の瞳を注視した。

古代の後を追って、その場に現れたユキがレイに向かって、

森:「山本さんは、3日間の営巣入りネ…」

と言って、レイの瞳を射抜いたが何故かその瞳は優しく輝いて、

森:「今回はレイさんの勝ちかな…」

と呟くと、傍に立っている平田主計科長に頭を下げた…

レイが平田を見て、

山本:「チーフ…」

と言葉を発すると、平田が古代に歩み寄って、

平田:「古代…スマン、山本を許してやってくれ…」

と言って古代に頭を下げた。

平田が、自分がプレゼントを勧めたことを古代に告げると、

古代は平田に、

古代:「そうだったんですか…」

と答え、

古代:「山本…今回のことはなかったことに…」

とレイの営巣入りを否定した。

隣でユキがレイに、

森:「よかったわね、山本さん…」

森:「どうやら、わたしと山本さんは“恋のライバル”の様ね…」

と言って、レイの瞳を見ながらニコッとほほ笑んだ。

するとレイが、

山本:「船務長… わたし達だけではないのでは… メルダ・ディッツ… 予想外の強敵ですよ!」

と言って、ユキにほほ笑み返した。

ユキがレイに答えて、

森:「瞬間物質移送器で、恋の告白か… わたしも見習わないといけない様ね…」

と言いながら、遠き時空を超えて古代のハートを射抜かんとしたガミラスの女性のスマートさに敬意を表していた…

漆黒の宇宙の闇に3人の熱き女性のハートが火花を散らした… (FIN)


素敵バレンタインお話をいただきました!
やっぱ、バレンタインはラブなお話を読みたくなりますもの…。
とっても幸せでございます。
(よろしければ、ブログもお読みくださいませ)
Sドクターさま、ありがとうございます♪ FROM瑞喜

2013年2月追記。
続編をいただきました! よろしければ、続けてお読みください⇒白き翼に願いを込めて

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